社会福祉士として福祉の仕事に携わろうと思った時、「あれ。運転免許ないけど大丈夫かな?」と疑問に思われる方が居るだろう。ちょっとしたことだが、就職が関係してくると思えば大きな疑問だ。
社会福祉士は運転免許が必要かと聞かれれば、「特別な事情がなければ、そしてよほどの都会でない限り運転免許は必要です」だ。
「特別な事情がなければ」と記したのは、障害やご病気など特別な事情がある方もいらっしゃるからだ。運転免許がないから社会福祉士としては働けない訳ではないし、実際に運転しない社会福祉士もいる。
そのため、ここでは『一般的に』社会福祉士に運転免許が求められている現状について解説したい。
運転が必要になる職場と場面について解説
最初に断っておくが、都会に就職するか、地方に就職するかどうかで事情は全く違う。
地方では車がないと生きていけない、いわゆる『車社会』であり、何の仕事をするにせよ運転免許を求められることが多い。そんな車社会だから、80・90歳を超えたドライバーも少なからず存在していたりする訳だ。
話を戻して、運転が必要になるのはどんな職場か、そしてどのような場面なのか。
居宅支援事業所・障害者相談支援事業所・地域包括支援センター
主に在宅の高齢者や障害者の相談を受ける居宅支援事業所、障害者相談支援事業所、地域包括支援センターでは運転がほぼ必須となっている。
最初の相談受付は電話が多いが、その後はクライエント宅を自宅訪問して手続きや具体的な相談支援を展開していくこととなる。
当初の手続きやサービス計画を立てた後も、クライエントの状態に大きな変化がないかや、現行のサービス計画で問題は生じていないかなど定期的なモニタリングも自宅訪問して行なう。
またクライエントが入院したと言えば、その病院へ訪問し、情報共有したりカンファレンスに出席することもある。何かしらの制度を利用するため申請書を市区町村窓口に提出しに行くこともある。
入所施設、通所施設
入所施設、通所施設でも、ほとんどの求人票に「運転免許必須」と書かれている。
相談員としては、例えばクライエントが施設を利用開始する前に事前説明や契約が必要であり、そのために自宅訪問する。利用開始後も、定期的なケース会議のための自宅訪問や、ケアマネージャー・包括職員や相談支援専門員と連携するためにその事務所を訪問するとか、とにかく施設でじっとしているというよりも外出する業務がかなり多くある。クライエントは徒歩や自転車で行ける範囲だけに留まっていないはずだ。
また相談員という立場で入職していたとしても、施設関係だとクライエントの送迎業務を行うことがほとんどだろう。通所施設はもちろん、入所施設の相談員も、ショートステイの利用者の送迎をしたり、場合によってはデイの送迎も手伝ったりすることもある。
職場によっては上司らから大型バスの運転免許取るように言われ、実際に免許を取って大型の送迎バスを運転させるところもある。もちろん本人の希望や適性の上での判断だろうが。
医療機関
医療機関でソーシャルワーカーとして勤務する時はどうだろうか。これについては、どのような病院で働くかにもよるが、やはり運転免許を求められることが多い。
MSWが運転する必要がある場面とはどんな場面か。
例えばクライエントの退院調整を図る時。クライエントの自宅の環境を確認し、手すり設置の必要性を検討したり、リハビリの成果を実際の自宅で確認したり、家屋環境調査を行う。むろん、リハビリスタッフと訪問することがほとんどなので誰が運転するかは別だが・・・。
また、どういった病院に所属するかにもよるが、転院の受け入れを決めるにあたり患者の状態確認に他院を訪問することもある。
公務員
では社会福祉士として公務員になればどうか?
生活保護におけるケースワーカー、児童相談所や高齢者福祉課。社会福祉士が公務員として働く場合を想定してみても、やはり外に出ていく仕事が多くある。自宅訪問、施設訪問、病院訪問など通常業務の範囲だ。
ただ配属される部署や、部署内でどのような仕事に従事するかによるだろう。
運転免許を取らないとどうなる
就職先の選択肢が狭まるかも
社会福祉士という職業柄、クライエントを中心に様々な人や機関と連携していくことが必要であり、必然的に外回り(外勤)も多くなる。もちろん移動の範囲が徒歩や自転車で行ける範囲であれば良いのだが、そうとは限らない。
また施設関係に勤めるならば、クライエントの送迎も自身の業務となることもある。
運転免許が無くても働ける職場を選ぼうとすると、どうしても選択肢(就職先)が限られてしまうのは事実だ。
毎回「運転お願いします」と言う負担
心の持ちようのようなことを言って申し訳ないが、何かをお願いする時は神経を遣うものだ。気の知れた友人になら感単に言えることも、職場の人となると少し様子が変わってくる。
運転が求められる業務の際に、毎回「(運転を)お願いします」と誰かにお願いするのも気を遣うものだ。
結論 -(特別な事情がなければ)運転できる方がいい-
社会福祉士として働く時に、施設内や事務所内に一日中とどまって業務をするということはあまり想定できない。
「特別な事情がないのであれば」やはり運転免許はあった方がいいし、ペーパードライバーでなく実際に運転できる方がいい。
TIPS
事情があって運転が出来ない方
お身体に障害やご病気をお持ちであるとか、事情があって運転できない方も居られるだろう。
障害やご病気のことを人に伝えることには、負担を感じる方もおられると思うので軽々しくアドバイスはできない。しかし、もしご自身が負担でなければ、面接などの機会を通じて運転が出来ない事情を伝えておくのは良いのではないかと思う。
現在、障害当事者の方も社会福祉士として多く活躍されている。就職希望者と会社組織とが、条件面や労働環境などについて良い擦り合わせができればと願う。
頑張ればどうにかなりそうなら
筆者の体験談を記しておこう。※不要なら読み飛ばしてほしい
大学4年次、筆者は地元での就職が決まった。就職先の施設は、自宅からさほど遠くはないが、古くからある集落というか、かなり狭い田舎道を抜けた先であった。当然バスや電車で通える場所ではない。
ペーパードライバーであった筆者は、施設まで一人で運転する能力も自信もなかったため、入社までの間、毎日 父と施設までの運転練習をした。
人様からすれば笑える話かもしれないが、まさか出勤のために家族に送迎してもらう訳にもいかず、必死に練習をした。そのおかげかどうか、今は(職場は違うが)会社の車で問題なくクライエント宅をあちこち訪問できている。
練習で解決しそうな余地があるならば、就職を機に頑張ってみても良いかもしれない。
職場選びと運転は慎重に
以上、一般的なことを記してきた。
当然のことながら、どうしても不得意なため運転したくない方もいるだろうし、事情があり運転できない方も居る。どのような職場を選ぶか、じっくり考えることをおすすめする。
また、車に乗っている以上は事故のリスクはある。特にクライエントを乗せての送迎業務は肉体的にも精神的にも負担が大きい。自分の健康管理とともに細心の注意を払って運転業務をおこなおう。