社会福祉士と地域包括支援センター

就職・転職
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社会福祉士の勤務先として、地域包括支援センターを考えたことはないだろうか。地域に住む高齢者の総合相談窓口として設置されいる地域包括支援センター。

ここには必ず社会福祉士を設置しなければならない決まりがある。つまり、社会福祉士が活躍できる職場であることは間違いない

ここでは約9年間、社会福祉士として地域包括支援センターで勤務経験がある筆者が、その仕事の実態について現場目線でお伝えしたい。

地域包括支援センターと社会福祉士

地域包括支援センターは介護保険法第115条の46第1項において、以下のように明記されている。

「地域包括支援センターは市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置して、住民の健康の保持及び生活の安定のための必要な援助を行うことにより、地域の住民を包括的に支援することを目的とする施設」

つまり、各専門職が協力して地域住民の健康や生活の相談に乗り、必要な援助を行うということであり、センターには必ず社会福祉士を置くようにと定められている。

地域包括支援センターの仕事内容

申し訳ないが、仕事内容についてはここでは示さない。厚労省のページを見に行けば、または市町村のホームページを覗けば、だいたいのことは分かる。(この記事は、勤めていた人間だからこそ分かることを書いているので、画一的なことは書かないことにした)

地域包括支援センターで働くメリット

ソーシャルワークが実践できる

社会福祉士はソーシャルワークの専門職である。

地域包括支援センターには、高齢者虐待や貧困、セルフネグレクトなど様々なケースが集まってくる。ただ単に介護保険のサービスを提供すれば解決という訳にはいかない。そこで社会福祉士のもつソーシャルワークの力が必要になる。

包括支援センターはソーシャルワークを実践するのにはうってつけの場だ。

自身のネットワークを構築できる

地域包括支援センターで勤務すると、様々な専門機関の方と連携を図ることがある。

社会福祉士としては、特に困難事例や虐待事例に関わることが多くある。その事例の背景には複雑に入り組んだ家庭環境や事情が潜んでいることがあり、課題を解決していくには関係機関や専門家との連携が必要となり、行政、警察、弁護士、学校などと関わりを持つことがある。

このように高齢者分野のみならず、さまざまな関係機関、専門家と連携できるのは、社会福祉士としての楽しみでもある。

相談業務に専念できる

例えば施設やデイサービスなどで、相談員として働いたらどうだろう。

確かに相談員業務がメインではあるだろうが、一方で、食事介助や送迎業務など介護士や相談以外の業務を任されることもあるようだ(※事業所の体制や方針による)

もちろん、そういった業務をやりたいと希望される方もいるだろうが、そうでない場合、地域包括支援センターはお勧めだ。介護したり送迎業務を行うことはない。

相談業務に専念できるのはありがたい。

地域包括支援センターで働くデメリット

24時間対応

地域包括支援センターは24時間対応となっているところがほとんどだ。

事務所が営業していない時間帯、または休日に電話がかかれば対応しなければならない。事務所の固定電話から携帯に転送される場合や、仕事用携帯に直接電話が掛かってくることもある。

ひとたび時間外や休日に電話がかかると、どんなに楽しい夜の予定も、お出かけの休日も、一気に仕事モードになってしまう。それに電話がかかってこなかったとしても、仕事用の電話を常に身に着けておくこと自体が負担である。

さらに言えば、緊急用の電話と言っても、客観的には「それって明日で良いよね…」と全く緊急性のない電話もかかってきたりする。

オンコール、これは負担だ。 
※ただしオンコール対応は社会福祉士に限らず、福祉現場ではよくあることだから仕方ない。

介護予防プラン作成

地域包括支援センターでは、介護保険における認定区分要支援1・2の方の介護予防プランを作成する業務がある。

プラン作成だけの仕事であれば大したことはなさそうに思えるかもしれないが、新規相談に虐待や困難事例などを抱えていると、そちらにばかり手を取られてしまい、プラン作成に十分時間が割けないことがある。

センターによっては、プラン作成の専任者を置いていたり、社会福祉士、保健師、主任介護支援専門員で分業しているセンターもあるが、多かれ少なれプラン作成の仕事はすることになる。

これが苦になるかならないかは個人次第だが、少なくとも筆者は苦であった。

筆者がプラン作成を苦に思うのには理由があった。それは根底に、社会福祉士が『ただプランを作るだけの人』になってはならないと思っていたからだ。そこには必ず社会福祉士としての視点や個別化が必要だ。

ちょっと特殊なお仕事

公民館で高齢者と体操?!

地域との関わりが重要な包括支援センター。そして地域に住む高齢者の介護予防を推進することが大切な仕事のひとつだ。時に、公民館や集会所で行われる高齢者サロンや老人会にお邪魔して、介護予防や介護保険の講話をしたり、一緒に軽い体操を行ったりもする。

包括支援センターだからこそ?の仕事かもしれない。

小学校で認知症高齢者支援の寸劇?!

認知症高齢者の支援のひとつとして、国では「認知症サポーター」を養成している。認知症を正しく理解してもらい、自身が出来る範囲で認知症高齢者や家族を支援してもらうもので、包括支援センターも地域住民や民間の方を対象に「認知症サポーター養成講座」なるものを実施する。

その一環で地域の小学校を訪ね、小学生に分かりやすく認知症について伝え、支援の仕方を学んでもらうことがある。その方法として、講話に加えて、職員が地域住民や認知症高齢者の役になって寸劇を行ったりもする。

包括支援センターに勤めると、あなたの演劇の才能が開花するかもしれない?!
(全ての包括支援センターが行っている訳ではないです)

地域包括支援センターで働こう

地域包括支援センターには社会福祉士、保健師、主任介護支援専門員が在籍するわけだが、それはつまり、それぞれの資格の専門性を生かした業務が存在しているということだ。

社会福祉士が包括支援センターに存在しなければならないのは、その専門性つまりソーシャルワークの実践が出来る人材だから、だ。

あなたも地域包括ケアシステムの中心を担う地域包括支援センターで、ソーシャルワーカーとしてのやりがいを感じてみてはいかがだろうか。