MSWとして働くって辛い

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※はじめに。この記事はMSWについて基礎知識がある方向けの記事です。
 MSW(Medical Sosial Worker) が何をする人かを知りたい方には向いていません。

筆者は一時期MSWになったことがあるが、すぐに脱落した。
勤めたのは急性期病院(二次救急指定病院・一次脳卒中センター)であったが、いま思い出してもただただ憂鬱な気分になる。細かく言えば色々あるが、単なる愚痴と化してしまいそうになるので辞めておく。

よってMSWの面白さや醍醐味、やりがいまで感じ得ることができなかったのだが、少しでも筆者の経験や感じたことが役に立てばと思いこの記事を記すこととする。

MSWが辛い理由

数字との闘い

大前提として社会福祉士はその倫理綱領において、クライエントの利益を最優先に行動するよう記されており、当然MSWもそのように行動している

しかし社会福祉士がMSWとして働く時、クライエント以外に向き合っているものがある。

それは数字、『病床稼働率』や『平均在院日数』である。とても平たく言えば、この数は病院の経営(収益)にも直結する数字であり、いわゆるベッドコントロールが求められる。(ベッドコントロールは病院全体で考えるべきことだが、専任の看護師や、MSWがその役割を担うことが多い)

患者が少なく病棟がガラ空きでも困るし、かといってベッドが空かなければ次の患者も受け入れられない。常に入退院のバランスをコントロールしていく必要がある。コントロールできていなければ、すなわち病院の収益が落ちる(減収)ため、そのプレッシャーは半端ない。

追い出す役目の人と思われる

前述のような事情もあり、クライエントの利益を最優先に考えながらも退院促進を行う。しかしたいてい退院促進は歓迎されないものだ。

限られた入院期間で患者や家族の気持ちに寄り添い、適切な声かけを行い、信頼関係の構築を図る。普通のことだが言葉で言うほど簡単ではない。しかしMSWは病院側の都合を全面に出したような追い出し屋に陥ってはならない病院側の都合を全面に出した『ただの追い出し屋』になってしまったら、それはソーシャルワーカーという自らの誇りを失ったということだ。

一方、同じ支援者であるMSW以外の社会福祉士やケアマネ等から、退院促進について理解を得られないことも辛い。

「○○病院はすぐ出されるから」「突然退院って言われても・・・」
陰ながらこのようなことも言われている。しかし、これは日々の連携の中で解消していくほかない。

もっと厄介なのは、病院内で医師や看護師などから「早く退院させて!(させればいいのに!)」といった声だ。全員ではないが、病院内でもMSWが『追い出し屋』と思っている人も居る。

クライエントの利益を最優先に考えつつ、各方面との調整、バランスをとったりすることも必要になってくる。

余談だが、MSW以外の社会福祉士やケアマネ等にも知っておくべきことがある

『病院側の都合で退院させられる』
確かに病院の都合もある。それは否定しない。しかし前述した『数字』は人が思っているより影響力がある。病院の収入に大きく関わっているからだ。極端な話、もし病院が赤字続きで閉院したら、地域で受けられる医療の一つが失われたということ。周り回ってその地域で暮らす患者(のみならず全ての人)の不利益になるのではないか。

MSW以外の支援者には「適切な医療の提供と病院経営を維持していくための事情もあるんだな」くらい頭の隅に置いておいてもらえたらいい。もちろん、クライエント自身や家族には言うべきことではないし言わないことだが。

※筆者の勝手な考えだ。たくさんある意見の中の一つだと思ってもらえればいい。

院内調整が大変

医者や看護師と違い、MSWは病院内にいる唯一の福祉専門職である。
当然学んできたことが違い、その視点やアプローチが違う。乱暴に言えば、医療職からすれば「治療が終われば退院」、MSWは「患者の戻る環境を整えてから退院」、というようなことだ。

当然のことながら、それが敵対するものではなく、各専門職の見解を総合し、より良い方へ調整していくわけだが、スムーズに進むことばかりではない。

よくMSWは、病院と本人・家族との板挟みになるというが、確かにそういうことは日常的に起きている。

もっと言えば、病院内でMSWの地位が確立されていない場合、正しく理解してもらえていない場合には、その意見が重要視されないなど、その病院での専門職の序列(そんなものあってたまるかと思うが、ある)も関係する。

MSWになりたいなら(最低限)

医療の勉強をする

何も医師や看護師までの医療知識を得ようとは言っていない。なぜなら、我われは社会福祉士であり、ソーシャルワークが武器だ。ソーシャルワークの技術を磨けばいい

しかしだからと言って、何も勉強しなくて良いかと言われればそうではない。自分が担当する診療科で主に取り扱う疾患や治療などについては勉強しておく必要がある。

例えば脳外科のMSWになるのに、脳出血って何ですか?脳梗塞って何ですか?では全くお話にならない。

在宅系・施設系の知識を勉強する

例えば退院とともに何かしらのサービスを利用開始しなければならない、というのは良くあることだ。そこでMSWが介護保険や障害者自立支援法などについて無知であれば、退院調整は難しくなる細かい事まで全てを理解することは不要だが、せめて、とんちんかんなことを言わないくらいには勉強しておくことが必要だ。

在宅系の相談員(障害相談員、包括職員、ケアマネなど)と連携を図る時に、「自分は全然分からないので、あとはよろしくお願いします」なんて頼み方をしたら、それはもう酷い怒りに触れることだろう。

同じく施設の種類や実情なども把握しておく必要がある。病院という箱の中でできることが、施設で「簡単に」実現できるとは限らない。

また余談だが、筆者は在宅系の相談員の方も、病院や医療について学ぶことが必要だと思っている。

急性期病院にリハビリ目的の入院を相談し断られると「あの病院は…」などと言う人がいて信じられない。急性期病院だ。救急車を受け入れなければならない、福祉の前に医療最優先でやらなければならない。どの病院がどんな役割を担っているか、知っておくべきだ。また基本の基本みたいなことを皆が集まるカンファレンスで聞いたりするのも、同業種ながら恥ずかしく思う。

ちょっと調べれば分かることは、自分で調べるべきでしょう。

まとめ

はじめに記したように、筆者は早々にMSWから脱落してしまったため「MSWになろう」と目を輝かせて言うことができない。現MSWの方においては、どこまで本記事に共感していただけたかも分からない。

しかし筆者は在宅系の相談員を続けていく中で、素晴らしい優秀なMSWに出会って助けていただいたことが何度もある。

いまご活躍のMSW方は、病院という組織の中で唯一の社会福祉専門職という責任とプライドを持ってクライエントのため働いておられることだろう。

あなたはMSWやってみたいですか?